中性脂肪を撃退!~食事・運動・薬 対策のポイント
特定健診(メタボ検診)や人間ドックなどで、「中性脂肪の数値が高めです」といった指摘を受ける人は、いまやまったく珍しくありませんね。
血液検査において、中性脂肪が「基準値となる150㎎/dl以上」の数値を示したときは、「経過観察」「要保健指導」「要再検査」などの判定を受けることになります。
それにしても、中性脂肪の数値が高いといったい何がどう良くないというのでしょうか。
「中性脂肪」は別名「トリグリセリド」(中性脂肪が基準値を超える症状は、「高トリグリセリド血症」とも呼ばれます)という脂質(アブラ)のことで、日々余分に摂取した炭水化物や糖分が、脂肪になったものです。
また中性脂肪は、肝臓に蓄積されたブドウ糖によって体内で合成される場合もあります。
「中性」脂肪と呼ばれるのは、三つの脂肪酸とグリセロール(グリセリン)が結合して、酸性が失われ中性の状態となっていることからきています。
カラダのなかには、「中性脂肪」「遊離脂肪酸」「コレステロール」「リン脂質」の、四つの脂質(アブラ)があります。
そのうち「中性脂肪」「遊離脂肪酸」は、生命の維持や日常の活動に必要なエネルギー源となるものです。
そして「コレステロール」「リン脂質」は、エネルギー源とはならずに、体内の細胞膜やホルモンをつくる材料になります(とくにコレステロールの果たす役割は重要です。LDL(いわゆる悪玉)コレステロールの恐さについては、「コレステロール 3分で知るポイント&下げる対策」をご参照ください)。
エネルギー源となる「中性脂肪」は、激しい運動をしたときなどに脂肪酸に分解され、いわば必要に応じた非常用エネルギーとしても使われます。
四つの脂質は、「リポたんぱく」という血液に溶け込みやすいかたちをとって血中にとどまり、血流で体内を循環しながら、それぞれの役割に応じた必要なぶんが費消されていくことになります。
ただ快適な現代社会においては、食事摂取量は過剰気味ですし、また運動も不足しがちであるため、中性脂肪の出番となるような非常事態はそうは起こりませんね。
しかたなく、余った中性脂肪はまさかのときに備え、体内にため込まれることになります。
中性脂肪は、付着する臓器やためこむ場所を選ばないため、肝臓以外にも内臓や皮膚の間など、さまざまな場所に入り込んで蓄積されていきます。
ところで中性脂肪も、「内臓脂肪」や「皮下脂肪」と同じ脂肪、すなわち体内に蓄積したアブラという点では同じです。
この三つはなにかと混同されやすいため、ここで用語を整理しておきましょう。
中性脂肪がとくに内臓の周囲やすき間についた場合、これを「内臓脂肪」と呼んでいます。
また、内臓のまわりについた中性脂肪が特に皮膚の下についてしまった場合は、これを「皮下脂肪」と呼んでいます。
一般に「内臓脂肪」は男性にたまりやすい脂肪、そして「皮下脂肪」は女性にたまりやすい脂肪とされています。
男性は「内臓脂肪型肥満」、すなわち腹回りを中心に脂肪がつく「リンゴ型肥満」になりやすく、一方で女性は「皮下脂肪型肥満」、すなわち下半身に脂肪がつきやすい「洋ナシ型肥満」になりやすい、とされます。
そして「皮下脂肪型肥満」のほうが、「内臓脂肪型肥満」に比べ一般に良性で体への影響も少ないとされます。
もちろん「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の両方の状態を呈している肥満の人も、少なくありません。
このような典型的肥満の人は、過体重によって膝や腰に強く負担がかかり、「変形性関節症」や「腰痛」などを発症するリスクが高まるのみならず、動脈硬化の進行も招くことによって、脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・高血圧や脳梗塞(脳血管疾患)など、さまざまな生活習慣病の発症リスクにさらされ続けることになります。
これがいわゆる「メタボリックシンドローム(メタボ・内臓脂肪症候群)」の状態です。
また中性脂肪が過剰に肝臓にたまることによって、肝炎や肝硬変・肝臓がんなどの発症につながるなど、過剰な中性脂肪は一部のがん発症リスクも高めることなども、最近明らかになってきています。
したがって、中性脂肪の増加そのものというよりも、それによって引き起こされる動脈硬化、それがひいては生命や生活の質をおびやかすさまざまな重篤な病気につながるという「生命・健康にとっての重大な危険性の増大」こそが、もっとも恐ろしくかつ警戒すべきこととなります。
なお内臓脂肪については、「内臓脂肪 減らすための知識と対策これだけ」もあわせてご参照ください。
最初に述べたとおり中性脂肪は体内でも合成されるので、外から摂取され運動でも消費されなかった分については体内でため込まれ、恐ろしいことに、中性脂肪をつくる材料へと再利用されることになります。
中性脂肪を増やすような生活習慣を放置することが、すなわち体内の中性脂肪をさらに増やしていくという、典型的な悪循環におちいるわけです。
また中性脂肪の増加はそれにとどまるものでなく、HDL(善玉)コレステロールを減らし、LDL(悪玉)コレステロールを増やすメカニズム全般に加担していることも、すでに研究によって明らかになっているところです。
現在、とくに30~40歳代のいわゆる働き盛りの世代において、中性脂肪値が基準値の150㎎/dl以上を上回る人が増加しつつあります。
日本人はもともと糖代謝異常が体質的に起こりやすく、中性脂肪値が潜在的に危険因子となりやすいという説もあります。
民族的な危険因子・食事量の過剰摂取・日常的な運動不足・加齢による基礎代謝量の低下など、私たちは日々、中性脂肪を増加させるマイナス要因に取り囲まれた日常を送っていると言えそうです。
強い意志をもって日々の生活習慣の改善に取り組む以外に、中性脂肪を減らすための解決方法はあり得ないものと、まずは覚悟しておきましょう。
中性脂肪を減らすには、まずは減らしやすい「内臓脂肪を減らす」ことがその第一歩です。
ラッキーなことに、内臓脂肪は皮下脂肪に比べて新陳代謝が活発なため、蓄積されやすい反面、努力によって減らしやすいというメリットもあるのです。
生活習慣改善のための第一歩は、「現在の自分の肥満度」の測定です。
正確を期すには、CT検査などで脂肪の蓄積状態をはかるのがベストですが、簡易チェックとしてまずは内臓脂肪の量を示す目安となる「腹囲(ふくい)」を測ってみましょう。
腹囲は「男性85cm以上、女性90cm以上」が、内臓脂肪型肥満を見分けるための一応の目安とされています(正しい腹囲のチェック方法などについては、こちらもご参照ください)。
一般に体重が1㎏減ると、腹囲も1㎝減ると言われています。
食事と運動による生活習慣の改善を行いながら、定期的に体重と腹囲をチェックして、その推移を記録しておくとよいでしょう。
適切な食事療法と、多少行うのがきついと感じる程度の運動療法をうまく組み合わせることによって、内臓脂肪を比較的短期間で30~35%程度減らせるといったデータもあります。
ただし「きつめの運動などは続きそうもない」とか、「仕事がら接待などもあって食生活を急には変えられない」といった人も多いでしょう。
そのような方は、長い目でみて無理のない目標を設定し、ゆっくりと減量および生活習慣の改善に取り組むというのも一法です。
半年程度の時間をかけて、現在の体重の5%程度を減らすことをひとつの目安に取り組むと、無理のないペースで続けられることでしょう。
たとえば70キロの人ならば、半年で体重3.5キロ減くらいを目標にするのです。
これを達成したときは、もちろん腹囲も数センチは減っているはずです。
このとき、食事と運動のどちらか片方だけをやるのではダメで、「両方とも同時に、日々半分ずつという気持ちで実行していく」心構えを持つとよいでしょう。
このように時間をかけて行う場合は、日々の食事内容や運動内容の記録をつけて、数日単位でその総量をコントロールするという発想を持つことで、気持ちのうえで負担を感じずに続けていくことができます。
たとえば昨日のメモをみて「昨日は食べ過ぎたわりに、なにも運動していないなぁ」と思ったら、本日分の食事内容を軽めにしたうえで、通勤の帰り道はいつもの駅の一つ手前で下りて歩くなどして、2~3日のスパンでみたときに適正量におさまるように調節していくのです。
カラダの脂肪を減らすための食事療法・運動療法の主なポイントは、以下の関連サイトでもご説明していますので、あわせてご参照ください。
・内臓脂肪 減らすための知識と対策これだけ
・高脂血症、何が問題か~原因と治療(薬・食事・運動)
最後に、中性脂肪を減らすことを目的とした薬の注意点に触れておきます。
ドラックストアなどで売られている、とくに体内の脂肪を減らす効能をうたった市販薬は、「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」という名の漢方薬をベースにしている製品が多いようです。
防風通聖散にはカラダの代謝を上げるはたらきもありますが、市販薬を飲むだけではやはり足りず、効果を促すための食事・運動療法を、服薬とセットで実行する必要があります。
病院など医療機関で出される中性脂肪を減らすための専用薬(脂質異常症治療薬)は、全体として安全性の高いものが多く、医師や患者の満足度も比較的高いと言われています。
ただしもちろん、それが薬物療法の十分な有効性を必ずしも示すわけではありませんし、病院で診察を受けた場合であっても、数ヶ月~半年程度の食事療法・運動療法による治療と経過観察を経て、それでも目立った改善が見られない場合に投薬治療へと進むのが一般的です(例外もあります)。
また薬のなかには、吐き気や胃の不快感・下痢・アレルギーといった、いくつかの副作用を伴うものがあります。
さらに、糖尿病など他の病気の薬と併用している場合には、相互作用として副作用がでる場合もあります。
このようなときは、薬の変更や一時的な使用中止によって問題が解決する場合もあるものの、まずは担当医師や薬剤師に早めに相談して対応するのがよいでしょう。
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